生きづらい人も、そうでない人にも。
webで読む"ZINE"、ヘッドメディジン。

CURRY1
カレーの話をしよう。大学3年の頃、カレー熱が出はじめた。福岡には数多くのカレー屋があり、ローカル誌はこぞってカレー特集を組んだ。
そこで見つけた気になる店や、山で出会った友人たち(山好きは、カレー好きが多い気がする)から教わったカレー屋情報を頼りに、いくつかの店に足を運んだり、スパイスを組み合わせて自分の好みのカレーを作るようになった。
スパイス特有の刺激と、土臭さや鼻へぬける甘い香りは、まるで森の中に居るかの様な清々しさを感じる。大地の生命力を感じる、そんなカレーが好きだ。
仕事と毎日の生活で疲れが溜まると、パソコン画面上の、温度もにおいもない無機質な文字がゲシュタルト崩壊して、踊り出す。
食べる事が作業的になり、食に対するこだわりがだんだんと薄れてしまう。そんな時は、カレーを食べるといい。
口の中に広がる小宇宙。食道を通り、腹の奥深くから熱くなる。そして体中に行渡る。
生きるとは何だろう。食べて出してを繰り返して、命がまわっている。
カレーを食べ終えた後の高揚感とともにあれこれ考えながら帰路へ着く。満たされた心と身体。額はわずかに汗ばんでいた。
CURRY2
魅惑のカレー7月。友人と追い山ならしを見た後、上人橋通りのマイティガルへ。
クマールさんのカレーは日本人の口に合わせないネパール風。福岡産の野菜を使って作る、添加物無しのカレーだ。
ダルバートセットを二つ注文した。セットはダルバート(豆のスープとご飯)に、アチャール(漬け物)、モモ(ネパール風蒸し餃子)かスパイスチキンどちらか選び、好きなカレーを一つ選択できる。
わたしはモモとマトンカレーを選択。皿の真ん中の何も入っていない凹みのところで混ぜて食べる。
ダルの優しい味に懐かしくなる。ダルとマトンカレーの相性も良い。そもそもダルバートを食べるのが約3年ぶりだった。
ネパールの山を歩き、ロッジで食べたダルバート。山をおりてからタメル地区で顔を合わせるうちに仲良くなったおじさんと食べた、90ルピーのダルバート。(ヤギ肉とチャイを追加しても125ルピーだ。)
明かりのない暗い店内、バケツに貯めた水で食器を洗う少年の瞳が、暗い店内で一層きらきらと輝いて見えた。
今年の4月に大地震が起き、わたしが過ごしたクーンブ地方の村も、タメル地区も姿を変えてしまった。
あの店はどうなったのだろうか。おじさんは無事だろうか。生存確認のとれた友人もいたが、連絡のとれなくなった友人が居る。
マイティガルのダルバートセットを食べながら、会いたい人たちの顔を思い浮かべていた。